STARLITE CREATORS Vol.17 便利と安全は両立できるのか?セフメット開発の裏側

株式会社TJMデザイン様(以下、タジマ様)が開発し、現場に普及させてきた「セフシステム」。工具や装備をワンタッチで着脱できる仕組みで、建設現場で働く人たちには広く知られています。そのセフシステムをヘルメットにも展開したのが「セフメット」です。最初にこの話を聞いたとき、私は正直「セフをヘルメットに取り付けるだけなら、そこまで難しくないのでは?」と思っていたのですが、その考えは見事にひっくり返されました。ヘルメットには、安全性、被り心地、使いやすさなど、さまざまな条件が求められます。セフメットでは、そこにセフシステムやライト、ファンなどの機能も加わります。
つまりセフメットの開発は、「セフシステム」「安全性能」「被り心地」という3つの要素を同時に成立させる挑戦だったのです。今回は、その難題に挑んだ開発担当のH.Tさんと営業担当のI.Hさんに、セフメット開発の裏側を聞いてきました!
本編の前に、セフシステムとは?
「安全性の確保」と「快適性」を両立するという、初めての挑戦
開発を進めるうえで、一番大変だったことは何でしたか?

H.T: セフシステム、被り心地、安全性能、この3つを両立させることですね。
安全性というと?

I.H: ヘルメットは、単に硬い帽子ではありません。外側の「帽体」と、内側の「衝撃吸収ライナー」、そしてその間の「空間」によって、頭部への衝撃を吸収する構造になっています。衝撃を受けたとき、帽体だけで衝撃を止めるのではなく、帽体→ライナー→空間という構造で衝撃を分散・吸収することで、頭部へのダメージを小さくしています。そのため、帽体の形状、ライナーの形状、内部の空間量のバランスが、安全性能を左右するのです。

H.T: だからこそ、ヘルメットの設計では安全性能を最優先に考える必要があります。ヘルメットの衝撃試験は、落下物を想定した試験が行われています。頭部に伝わる衝撃荷重の規格値は4.90kN以下と定められています。重さに換算すると約500kg相当の力です。つまり、ヘルメットは変形・破損することで、頭にかかる数百kg規模の衝撃を吸収・分散する役割を持っています。
衝撃吸収の仕組み


H.T: 内部空間に比較的余裕があるTC-750Rというヘルメットをベースにしましたが、その中にセフのための構造物、シールド、前のライト、後ろのファンケースなど、どんどんヘルメット内部に影響する要素が入ってくる。そうすると、衝撃を吸収するための空間がどんどん削られるんです。

I.H: つまり、「便利にしたい」という要求と、「安全を守りたい」という設計の考えが、どうしてもぶつかるんですね。この話は、打ち合わせの中でも何度も出てきました。
営業としては、お客様の要望をそのまま社内に持ち帰るだけではなくて、設計が成立する形に落とし込む必要がありました。開発から「このままでは安全試験に通らない」と言われれば、それをどう伝えれば納得してもらえるかを考える。逆にタジマ様から「どうしてもこうしたい」と言われれば、開発に「この条件なら成立できないか」と相談する。間に立って、両方の言い分を聞きながら、少しずつ形を作っていくような仕事だったと思います。

H.T: 僕とタジマ様の打ち合わせの場も設けてくださって。僕の中では、お客様の窓口は営業というイメージがあって、僕がでしゃばってIさんが不快に思ったらどうしようという不安がありました。だけど、「一緒に話したほうが早い!」と、どうすれば開発がスムーズに進むかを最優先に動いてくれて、すごく頼もしかったです。これはうちの文化なのだと、あとで知りました。当時の僕は、ピカピカの新入社員でしたからね(笑)

規格値4.9kNに対して15kNという現実、開発チームの試行錯誤が始まった
話を戻して、それらの課題はどのように解決していったのですか?

I.H: 設計が一番大変だったのは、やっぱり安全試験のところですね。形状はできてきているのに、試験の数値がなかなか規格値に入らない。

H.T: そうですね。既存のTC-750Rの内側にABSの板を貼って、セフの構造物がヘルメット内部に出てきた状態を再現してみたり、衝撃吸収ライナーを切って組み合わせて、どの厚み・形状なら衝撃を吸収できるのかを試したり。本当に、少し形を変えては試験、また変えては試験、という感じでした。

I.H: 私も開発現場に行って、一緒に試作品を見たり、試験の結果を聞いたりしていました。タジマ様が懸念しそうなことを、開発の段階で確認しておきたかったんです。

H.T: 設計だけやっていると、安全性や構造のことばかり考えてしまうんですが、Iさんから「実際に使うとどうか」という視点で質問をもらえるのはありがたかったですね。

I.H: それでも、金型を起こして試作したときの試験結果は衝撃でしたね。

H.T: ええ、試験後の空気の重さは一生忘れないレベルですよ。規格値4.90kNに対して、結果は15kN。あり得ない数字が出てしまって。手作りの試作品では規格値をクリアしていたので、「いけるかもしれない」と思っていた分、あのときは結構きつかったですね。

I.H: でもそのとき、試験室のHさんや、生産技術のTさんが「ちょっと一緒に考えよう」と声を掛けてくれたんですよね。

H.T: そうなんです。Hさんは当たり方や変形の仕方を見ながら「どこに力が集中しているのか」「ここの衝撃を逃がした方がいいんじゃないか」、Tさんは「この形状だと量産するときに厳しい」「肉厚をこう変えた方が強度と成形のバランスがいい」と、僕とは違う視点で検討してくれました。
その結果をもとに、「この部分を少し削って空間を増やしたらどうか」とか、「ここに逃げを作ったら衝撃が分散するんじゃないか」とか、本当にいろんなアイデアが出てきました。一人で考えていたら、たぶん同じところでずっと止まって心が折れていたと思います。

最後に見つけた突破口
設計、試験、生産技術、営業(顧客)視点がコンプリート…!
最終的に、どのような方法で衝撃荷重の規格を突破したのでしょうか?

H.T: 後ろのリアカバーをクッションとして使う構造でした。リアカバーを標準装備として、その状態で検定を取るという方法です。製品仕様も含めて成立させた感じですね。

I.H: その案が出たとき、「これでいけるかもしれない」と思いました。
ただ、最終的にはタジマ様にも納得していただかないといけない。なぜこの構造になったのか、安全性はどう担保されているのか、リアカバーが標準装備になる理由は何か、というところを説明して、最終的にはこの仕様で進めましょうということになりました。

H.T: そこから改めて試験を行い、最終的には規格値4.90kN以下をクリアすることができました。あのときは、嬉しさより「やっと出口が見えた」「協力してくれたみんなに良い報告ができる」という安堵の気持ちが大きかったです。

タジマ様との開発で見えたもの
今回の開発は、スターライト単独ではなく、タジマ様との共同開発でした。振り返ってみて、印象に残っていることはありますか?

I.H: タジマ様は、もともと「自社開発したセフシステムをヘルメットに取り付けたい」という構想を持たれていました。その中で、私たちに声を掛けてくださったのが始まりです。タジマ様がコンセプトや販売を、スターライトがヘルメットの開発を担当し、一緒につくっていくことになりました。
印象に残っているのは、ユーザー目線を徹底的に追求する姿勢ですね。被り心地や装着感について、現場の声を集めながら議論されていました。

H.T: 最初は正直、「ヘルメットに工具を付ける?どうやって?」という驚きが大きかったです。ヘルメットは安全保護具なので、少し形を変えるだけでも安全性能に影響が出る可能性があります。一方で、タジマ様は「現場で本当に使いやすいか」という視点をとても大切にされていました。
今回の開発では、「ヘルメットとして成立するか」という視点と、「現場で本当に使いやすいか」という視点の両方がありました。何度もやり取りを重ねたからこそ、セフメットができたんだと思います。
そして、次のヘルメットへ
最後に、お二人にお聞きします。今回のセフメット開発を通して、それぞれにとって「ヘルメットをつくる」とは、どんな仕事だと感じましたか?

I.H: 長年ヘルメットに携わってきましたが、これまではどうしても安全保護具としての機能を中心に考えてきました。ですが今回の開発を通して、ヘルメット単体ではなく、現場で働く人の仕事全体を見て、その中でヘルメットに何ができるのかを考えることが大切だと改めて感じました。

H.T: 今回の開発は、正直うまくいかないことの連続でした。でも、どうしたら実現できるのかを考え続ける過程そのものが、自分の知見を広げる経験になりましたし、失敗から多くのことを学べました。いまはまた、新しいヘルメットの開発に挑んでいます。セフメットとはまた違った困難がたくさんあって、悩みながら設計しています。でも、今回いろんな人に助けてもらいながら乗り越えた経験があるので、絶対に乗り越えてみせるという気持ちで取り組んでいます。
これからも、人の命を守るヘルメットの重要性をもっと広めていきたいですし、安全性だけでなく、機能や使いやすさの幅も広げていけるようなヘルメットを開発していきたいです!
インタビューまとめ
設計だけでなく、試験の視点、生産技術の視点、営業や顧客の視点。それぞれの立場の人が意見を出し合うことで、課題をクリアしていくのが印象的でした。どの取材でも感じるのは、スターライトの開発は「誰か一人がすごい」のではなく、「みんなで解決していく開発」だということ。数値が出なくても、方法を変えて、考え方を変えて、最後までやり切る。絶対に諦めない。最後は「人が解決している」のだと感じます。

「こういう相談、してもよかったんだ」―そんな声を、よくいただきます。
スターライトでは、設計・試験・量産だけでなく、他社製品との組み合わせや新しい機能の実現など、構想段階からの共同開発にも対応しています。「こういう製品は作れないか」「既存製品をベースに新しい機能を追加したい」そんなご相談も歓迎しています。構想段階のアイデアでも構いません。まずは、お気軽にご相談ください。