STARLITE CREATORS Vol.8「絶対成功させる!チーム」の常識とは?
超耐熱材料 次世代BAKESの開発

「絶対成功させる!チーム」の常識とは?超耐熱材料 次世代BAKESの開発

こんにちは。スターライトの広報担当 辻本です。今日は、半導体や航空宇宙用途で期待される超耐熱材料「次世代BAKES(ベイクス)」を開発するチームの取材現場に来ています。あっ、見てる。3人がすんごい笑顔でこっちを見てる。とにかく、話を聞いてみましょう!

今日はよろしくお願いしm・・・

S.W

S.W:待ってましたよー!僕、もう喋って大丈夫ですか?

こんにちは、Sです!このチームはですね、これまでのBAKESの改良ではなく、まったく新しいBAKESを開発するんです。どうしても無理だったことを、どんな手を使ってでも成し遂げます!そのために、あえて実績を否定し、伝統を無視することも恐れない、そんな我々チームを人はこう呼ぶ・・・

W.Y

W.Y:ストップストップ。辻本さん、50cmバックしてるやん。ごめんねぇ、ちゃんと説明するわ。

プラスチックって熱に弱いイメージがあるけど、そうじゃない。スターライトが約80年前に開発した耐熱樹脂材BAKESは熱硬化性のフェノール樹脂をベースとし、真っ赤な鉄が流れていく製鋼製造などの過酷な条件の中で活躍しています。APS開発チームのミッションのひとつは、製鋼よりも高温のセラミクス・ガラス加工分野向けの超耐熱BAKESの開発です。

S.W

S.W:そんな我々チームの合言葉はズバリ「破壊と創造」。これまでのBAKES=フェノール樹脂にとらわれず開発しています。具体的には、耐熱・高耐久用途には硬く、含浸性*に優れたフェノールがいい、とかね。Iリーダーは僕らに「この概念を一度、ぶっ壊して考えろ!」と脅迫、いやアドバイスしました。

  • 含浸性:合成樹脂が織物などの組織または構造のすき間にしみこむ性質のこと。

BAKESには80年の技術の蓄積があるのに!?それを破壊するって一体…(ガーン)

S.W

S.W:BAKESの耐熱特性より200℃以上も高い条件で優れたすべり性能を発揮する材料開発を目指していますが、BAKESでの“当たり前”であるフェノール樹脂に見切りをつけて、ポリイミド樹脂に乗りかえちゃいました!

フェノール樹脂ベースならたくさんの実績データや、工場でも量産経験が豊富なので材料開発はスムーズなんですけど、絶対的な耐熱性を求めたとき、僕はスターライトであまり検討実績がないポリイミド樹脂を選びました。ポリイミド樹脂の難しさはたくさんありますが、そのひとつはフェノール樹脂のように強化材に染み込まないので、新しい分散方法と成型加工を探らねばなりません。また、ポリイミド樹脂そのものが高価なので、それにマッチした用途を見つけなければならない。

そんな中、頭でっかちの僕が文献や過去データを調べまくって材料組成を考えていると、Iリーダーがいつのまにか加工・量産方法を考えてくれている。また、W.Yさんはお客様の現場に行って超耐熱BAKESが適用できそうな場所を探して見つけてきてくれる。皆さん、とってもおせっかいです(笑)。だから僕も、負けずにどんどん材料案を考えまくります!イノベーションって流行りのコトバで煽ってくる人は大勢いるけど、「じゃ、何からやるの?」となると具体案を言えない人が多い。でも、僕らは泥臭いと言われても課題にグイグイがぶり寄り、得意を活かし、なんでもありで結果を出そうともがきまくっています!

「世界最高レベルの強度と超耐熱のBAKESを開発して世界中にアピールしたい!」と野望を語るS.Wさん
「世界最高レベルの強度と超耐熱のBAKESを開発して世界中にアピールしたい!」と野望を語るS.Wさん
S.W

S.W:あ、次、W.Yさんのお話ですが、彼、開発材で樹脂さえ使っていません!(にっこり) 「THE 破壊と創造」!

樹脂を使わない…だと?それで問題ないの?

W.Y

W.Y:そう、NO樹脂なんです。BAKES商品のほとんどが樹脂成型ですが、私が開発した「BAKES-TT」は、耐熱織物、つまりマットです。アルミ押出生産ラインに採用され、500℃もの高温のアルミ押出品にキズつけずしっかり受け止め、そして長寿命

アルミ押出ライン向け耐熱織物BAKES-TT
アルミ押出ライン向け耐熱織物BAKES-TT
500℃のアルミをキズつけず受け止め長寿命

アルミよりも高温な製鋼製造で実績アリのBAKESでイケるのでは?

W.Y

W.Y:そう思ってた時期が、私にもありました(笑)。1,000℃もの鉄を延ばす圧延ローラー軸受で実績のある既存BAKESなら耐熱性は申し分ないからアルミでも!と自信満々でテストしたけど、結果は思いっきり失敗。押出工程のアルミ製品は想像以上にやわらかく、硬いフェノール樹脂のBAKES上を通過した途端にキズがついてしまいました。これは、これまでのBAKESよりもかなりやわらかいモノでなければと。そこで、思い切ってスターライトのお家芸である樹脂成型をせず、織物に工夫した商品を開発することにしたんです。

前例をブチ壊すことに、不安や恐怖はない?

W.Y

W.Y:開発を進めるなかで織物がベストと分かってきたけど、BAKESの生産でこんな商品は扱った経験がない。量産は?品質管理はどうする?と悩みましたが、Iリーダーが「イケる!って感覚があるなら、信じてやったらええやん。量産は任せとき!」と突き落とし、いや、背中を押してくれました。チーム全体でなんとかして絶対成功させるぞ!って雰囲気に。めちゃくちゃ心強かったです。

「前例をぶち壊すことにGOをくれたIリーダーに感謝!」と語るW.Yさん
「前例をぶち壊すことにGOをくれたIリーダーに感謝!」と語るW.Yさん

そして完成したBAKES-TT!ホントだ、樹脂じゃない。こんなソフトな手触りでホントに大丈夫…?

W.Y

W.Y:実は、アルミ押出工程ではやわらかい耐熱フェルトが使用されていましたが、短い繊維が絡まり合ってるだけ(図A)なので、使用するうちにほつれていきます。フェルトを樹脂で固めてしまえばほつれはおさまりますが、アルミをキズつけてしまう。繊維をしっかり固めるには?と考えたとき「しっかり織って固くする」という答えにたどり着きました。

BAKES-TTでは連続繊維を多重織でしっかりと整列させています(図B)。耐熱フェルトに比べ最大8倍も長く使え、交換頻度と廃棄物を大幅に削減できました。例えるなら、不織布(フェルト)マスクより布(織物)マスクのほうが繰り返し長く使えるようなものですね。

図A:フェルト
(ほつれやすい)

図Aフェルト(ほつれやすい)

図B:BAKES-TT
(多重織でほつれにくい)

図B BAKES-TT(多重織でほつれにくい)

BAKES-TTは現場で働く人、環境、そしてお財布にもやさしい画期的な新商品!「破壊と創造」のチーム、次の狙いは?

W.Y

W.Y:産業設備・機器向け超耐熱商品の開発という点はブレません。これまではトライボロジー技術により「摩耗せず長く使える商品」「摩擦を少なくし、キズ発生やエネルギーロスをなくす商品」を生み出してきました。しかしこれからは「繰り返し使える・リサイクルできる」とか「バイオマス原料を使う」など、サステイナブルな視点をプラスしたBAKES商品をもっともっと提案していきます!

I.H(リーダー)

I.H(リーダー):え、めっちゃキレイにまとめてるけど、俺の出番ないん!?

W.Y
S.W

W.Y&S.W:あ、もう尺ないみたいなんで(笑)

インタビューまとめ

いやぁ、今回もいい意味で期待を裏切られまくりました。それぞれの得意技を活かし、課題解決のゴールに向かってグイグイ行くのは、まさにOne Teamって感じ!いろんな狭き門の突破を目指す人々のチームがスターライトを支えています。そんなCREATORSをこれからもガンガン取材していくぞー!!

CREATORSをこれからもガンガン取材していくぞー!!

お客さまとのパートナーシップで新しい共創を。
ぜひご相談ください。

軟質のアルミ押出品の保護で活躍するBAKES-TTは、従来品の8倍もの長寿命を実現するのはもちろん、使用後の製品を回収し、その未使用部を集めて再製品化しています。スターライトはこれからも、この星のためにできるサステイナブルな商品、サービスを開発、提案していきます。お気軽にお問合せください。