九州大学水素材料先端科学研究センターさま × ALP超高圧水素圧縮機シーリング向け複合材料グレード 九州大学水素材料先端科学研究センターさまとの「発見」で誕生した「機能」は水素エネルギー社会の可能性を大きく飛躍させ、水素ステーションの実用化につながっています。

スターライト工業の独自材料 ALP(アルプ)は、九州大学水素材料先端科学研究センターさまとのタッグにより、超高圧水素圧縮機のシーリング分野でも飛躍を遂げています。水素ステーションで実用化されているその”耐久性と維持力”は、未来の水素エネルギー社会実現に向け、さらなる超高圧のための共同研究を進めています。そんな「ALP超高圧水素圧縮機シーリング向け複合材料グレード」の開発秘話をお届けいたします。

九州大学水素材料先端科学研究センター

ALP超高圧水素圧縮機シーリング向け複合材料グレード

ALP超高圧水素圧縮機シーリング向け複合材料グレード

ALP超高圧水素圧縮機シーリング向け複合材料グレードは、ピストンリング用途として、水素ステーションなどで使用される超高圧水素圧縮機に搭載。

圧縮機向けにはすでに50年以上の実用化の実績をもつ複合材料で、水素以外の特殊気体雰囲気中でのシーリング用途にも使用されている。専門の研究機関との共同研究で蓄積してきた知見を元に、85MPaの水素雰囲気中でも摩耗や損傷が少ない高耐久設計となっている。

ALP超高圧水素圧縮機シーリング向け複合材料グレード

On Your Side Vol.4 KYUSHU UNIVERSITY HYDROGENIUS × STARLITE企業さまとの「機能」対談シリーズ

安定した品質と供給体制は大変頼もしいです

KYUSHU UNIVERSITY:澤江教授「共同研究には、志の共有が欠かせません」

スターライト工業:上島今日は、澤江先生との共同研究についての対談ということで、貴重なお時間をありがとうございます。振返って見ると九州大学さんとの共同研究を始めてもう15年近くになると思います。この共同研究での知見はスターライトでの材料開発の礎となり、新開発のピストンリングや圧縮機リングの高耐久化、お客様へのフィードバックなど、着実な成果となっています。改めて感謝申し上げます。

安心安全な「食」が“サステイナブル社会の実現”において果たす役割

最近になって水素燃料電池自動車や水素ステーションを街頭で見かけることも増えてきて、少しずつですが着実に水素エネルギー社会が広まっているんじゃないかなと実感しています。その度にこの共同研究が形となっているんだと思うと、研究をやってきてよかったなと感じます。

KYUSHU UNIVERSITY:澤江教授わたしもこの対談を楽しみにしていたんですよ。基礎研究となると、社会へ直に商品を展開している訳ではないので、「より良い社会づくり」につながっていると実感する機会があまり多くありません。しかし、企業の方々との共同研究では先ほどのようなエピソードをお聞きすることで、研究への熱の入り方は違ってきます。

スターライトさんと共同研究を始めたのは、ちょうどここ「水素材料先端科学研究センター(HYDROGENIUS)」が設立されるあたりのタイミングだったと記憶しています。福岡県が「福岡水素エネルギー戦略会議」を立ち上げ、九州大学もそのメンバーとして参画しました。次世代のクリーンエネルギーとして期待される水素エネルギーの実用化に向けた取り組みが福岡で立ち上がることは大きな意味のあることだと感じたのを覚えています。

気泡をうまくコントロールできる、耐久性にこだわった設計

スターライト工業:上島「機能材料開発には、学術的な知見が必要不可欠」

スターライト工業:上島澤江先生との研究は私にとっても機能材料開発の励みになっています、ありがとうございます。福岡でクリーンエネルギーの先端科学研究が行われていることは、かつて炭鉱の町として賑わった地域も福岡には多く、感慨深いですね。

「水素材料先端科学研究センター(HYDROGENIUS)」では水素を安全かつ効率的に使うために必要不可欠な技術や材料と水素の研究が行われています。特に高圧や高純度の水素ガスを用いた実験技術、材料の強度や摩擦・摩耗の評価技術、高度な分析技術などを用い、時間をかけた試験やデータ分析を提供しています。試験結果についての澤江先生の視点やアドバイスはスターライトにとって大変魅力的で、やはり、社外での学術的な知見は絶対的に必要だと捉えています。

KYUSHU UNIVERSITY:澤江教授水素は未来の「エネルギーキャリア」として注目されています。さまざまなエネルギーを水素に置き換え、必要な時に必要な場所に運んで使用する「エネルギーキャリアとしての水素」ですね。

次に気になるのが、置き換えられた水素をどうやって実際に運ぶのか?なんですが、今考えられているのは、水素ガスを圧縮して高圧ガスにするか、冷却したりトルエンに吸収させて液体にして運ぶ方法などです。太陽光やバイオマスなど様々な新しいエネルギーの生産方法が活用される社会になると、エネルギーキャリアとしての水素はそれに伴ってさらに広がっていくと考えています。

長尺のALPローラーを安定した品質でいかに製造するか

また、水素で走る「燃料電池自動車(FCV)」もクリーンな乗り物として注目されていますが、その実用化のためには燃料電池等で使う水素を、安全に「蓄え」「運び」「供給する」インフラ技術を確立する事が必要となります。「水素ステーション」はそのインフラの代表例で、水素を超高圧で圧縮するために不可欠となるのが「水素雰囲気(✳水素で充満されている環境)のトライボロジー」技術なのです。

スターライト工業:上島共同研究のテーマですね。FCVでは積載する水素ガスを70MPa程度まで昇圧する方法が実用段階に入っていますよね。一方、燃料電池自動車に高圧水素ガスを供給する水素インフラ(ガスステーション)側では、自動車より更に高圧の80~100MPaまで昇圧した水素ガスを“安全に”貯蔵・運搬しなければならず、そこで使用される多くの軸受やシールといった機械要素が高圧・高純度の水素ガス中でどのような摺動をするのかについての知見はまだ十分ではないと感じます。

100MPaまで昇圧した水素を封止する技術は、20年以上前には既にプロトタイプとして存在はしていましたが、長期間の実用に向け十分な耐久性能には達しておらず、「100MPa」はいまだ未知の領域なのです。

気泡をうまくコントロールできる、耐久性にこだわった設計

KYUSHU UNIVERSITY:澤江教授「水素利用機械システムの安全設計指針の確立を」

KYUSHU UNIVERSITY:澤江教授そうですね。水素は材料表面に対し決して不活性ではないので、高圧ガス雰囲気における更なるデータの収集と摩擦・摩耗機構の検証が求められます。ガスを圧縮するピストン部に装着されたコンプレッサーの樹脂ピストンリングは、高圧・高純度の水素ガス中で金属表面上を摺動しています。設計では、ガス雰囲気での摩擦摩耗挙動を把握することが、効率や寿命に大きく関係してきます。

さらに高圧ガス曝露試料を用いた実験だけではなく、ガス雰囲気において材料の摩擦・摩耗特性を「その場」で計測するための実験設備の整備も進めているところです。これらの実験設備により、ガス雰囲気における材料のトライボロジー特性に関するデータベースの整備が進むことで、FCVをはじめとする水素利用機械システムの安全設計指針の確立に繋がっていくのです。

長尺のALPローラーを安定した品質でいかに製造するか

スターライト工業:上島この水素研究専用の実験設備「高度雰囲気制御摩擦試験機」から集めた摩擦・摩耗のデータとXPSによる表面分析結果を元にしたディスカッションは、材料開発の礎になっています。

KYUSHU UNIVERSITY:澤江教授上島さんとの議論では、現場で起きる現象がテーマになることもあるので、研究だけでは得られない気づきも多く、興味深いですね。そんなリアルな現場の声と実験データの間にある、このALPが水素社会の広がりを支えてくれるんだと、いとおしくも感じるんです(笑)

そういえば、先日学生との間で「100MPaはどの位の力か」と話題になりましてね、例えとして、地球上で最も深い「マリアナ海溝」の海底は水深10,000mですので、その水圧が1000気圧=約100MPaになります。そこでは1,000kg(1ton)の重りが上下左右、360°の方向から1cm四方(=小指の爪くらい)に置かれている状態になるという話になりました。学生からは想像しにくいと言われましたが・・

長尺のALPローラーを安定した品質でいかに製造するか

スターライト工業:上島「トライボロジー技術で、水素社会の実現に貢献したい」

スターライト工業:上島材料へのいとおしさ、よく分かります!(笑)小指の爪の上下左右に1tonの重りですか、ただただ痛そうくらいしか想像ができないです(笑)100MPaまで昇圧した水素を封止する技術で樹脂製の深海探査艇でマリアナ海溝に潜れる日がくるかもしれませんよね(笑)

この研究センターを囲む青い海と緑の森。この景色を数百年、数千年後の人びとにも残せるかどうか。水素社会実現がそのカギなんですが、私たちの世代が背負っているものはまだまだたくさんあるんだと感じています。

均一に旨味が広がるというか、とにかく美味しいです笑。

KYUSHU UNIVERSITY:澤江教授福岡県は、水素エネルギー開発・普及を総合的に推進していて、「水素タウン」の整備や「水素ハイウェイ」の構築など、水素エネルギー社会を具現化する社会実証を進めています。また九州大学では「九大水素モーターショー」を開催しFCVに触れる機会を提供するなど、水素社会の片鱗を社会へ伝える活動を積極的に行っています。今後も企業との共同研究を基点にした研究開発はますます大事になってくるでしょう。水素が日本だけではなく東アジアや世界でもサステナビリティーの中核的役割を果たすと考えています。

スターライト工業:上島持続可能な社会の実現に向け、水素雰囲気でのALPピストンリングを、エネルギー革命にはなくてはならないものに育てていきたいと改めて実感しています。これからも、トライボロジー技術で社会の期待を超える提案を重ねてまいります。本日はありがとうございました。

企業さまとのパートナーシップとともに、様々な機能を開発してまいりました。
ぜひ、ご相談ください。

高耐久性、耐ガス脆化、オイルレス、低騒音低振動、メンテナンス性向上を追求した高機能樹脂商品で新しい価値向上に貢献いたします。お気軽にお問い合わせください。

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